おかしな二人
確かに、水上さんもジーンズだ。
けれど、ミュージシャンっていう高級ブランドを背負っている高級ジーンズを履いた水上さんと。
どこの馬の骨とも分からない貧乏ったらしい女が、まさに貧乏ったらしいジーンズを履いて店内に入るのとではわけが違う。
居酒屋や、その辺のスーパーへ入って行くのとは別問題だ。
モジモジと未だ店内に踏み込めずに居ると、水上さんは徐に外へ出てきて、いきなりあたしの手を握りグイッと強引に中へと引っ張り込んだ。
「あわわわっ」
急に手を引かれた事に慌てて、おっととっ、なんて片足をケンケンしている姿は益々情けない。
しかも、黒服のドアマンさんが、そんなあたしに向って、丁寧に“いらっしゃいませ”のお辞儀なんてしてくれちゃうから恥ずかしいったらないし。