おかしな二人


水上さんが予約を入れていたのは、シェフの名前が店名になっている無国籍料理のお店だった。
そのシェフの名前は、無知なあたしでも知っている有名さ。

店内は、ベージュとブラウンを基調にした明るめの優しい雰囲気を漂わせている。
歩くたびに、木の床板がコンクリートとは違う優しい衝撃を与える。
ヒールを履いていれば、心地よくコツコツと木板が音を奏でていた事だろう。
生憎、あたしも水上さんもスニーカーだったので、その感覚を味わうには至らなかったけれど。
て、水上さんがヒールを履いてたら恐いか。

案内されたのは、二階にあるゆったりとした窓際のテーブル席。
夜の銀座が見下ろせる席だ。

椅子を引かれて席に着くと、飲物のメニューを手渡される。
昨日、凌と食べたレストランと同じように、料理はクリスマスのコースに決まっているみたいだ。

「何がええ? ワインでええか? あ、最初にシャンパン一杯頼もか」

水上さんは、あたしの答も訊かずにどんどん先に決めていく。
けれど、優柔不断でいつまでもメニューを決められない男よりかはずっといい。


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