おかしな二人
「冷たい手やなぁ」
「冷え性だから」
話しかけられても、いつもの通りのテンションで返すだけ。
ポケットの中で、繋がる手と手。
繋がったその手は冬の寒さも感じさせないほど暖かくて、カシミヤの手袋の暖かさをあたしは知らないけれどそんな手袋なんて目じゃないと思った。
ずっとこうしていて欲しい。
心の中に芽生える想い。
ううん、ずっと前から芽生えていたんだ。
蕾をつけて、太陽の光と水を待ち続けていた。
花咲く日を今か今かと待ち焦がれていたんだ。
だけど、繋がっていない方の手を見て、心は寒々としていく。
今すぐにでも、この手を振り解かなくちゃダメだ、とそんな気にさせる。
だって、英嗣のもう片方の手には、アクセサリーの入った小袋がしっかりと握られているから。
あたしは、繋がる手の温もりに嬉しさを感じるも、その小袋が目に入るたびに温かな空気の中に冷たい風が切り込むように入ってきて寒さに身を固くした。
そして、言い聞かせるんだ。
あたしは、ただの雇われの身だと。