おかしな二人


あたしが次の言葉を待っていると、もう一度英嗣が口を開くのと同時に、ポケットの中でタコが威勢よく踊りだした。

「あんな――――……」
「あっ、電話」

言葉を遮るつもりはなかったのだけれど、咄嗟にそう口から出ていた。

英嗣は、口を閉じてしまい、あたしはごめんなさい、と目をつぶり携帯を取り出す。
ディスプレイには、最近見慣れた名前が光っていた。

「凌……」

あたしの呟きに、繋がっていた英嗣の手がピクリと反応した。
と同時に、スルリと手が離れ、英嗣も少し離れていく。

その距離と、逃げてしまった手の温もりに心がキュッとなり、電話に出ずに英嗣を見てしまう。

「電話やろ。はよ、出た方がええんちゃう」

素っ気無い言葉が、胸を締め付ける。

あたしは、一気に冷えていく手の冷たさを感じながら、通話ボタンを押した。


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