おかしな二人
なんとかベッドへと凌を横たえらせたあと、コートを脱ぎリビングのソファの上に置いて買ってきた薬を開ける。
キッチンでグラスに水を注ぎながら、そういえば、英嗣は冷蔵庫にミネラルウォーターを常備していたな、と思い出した。
水道の水なんか飲めるか、どあほ! 的な顔で見られたっけ。
肩を竦め冷蔵庫の中を覗くと、案の定ペットボトルが数本おさまっていた。
「こういう業界の人は、水道水を飲まないのね」
贅沢者、と零し、少し呆れたような溜息をついた後、急いで寝室へと戻る。
「凌」
声をかけると、薄っすら目を開ける。
あたしは、枕を重ねて背凭れにし、凌に薬を飲ませた。
「少ししたら、効いてくる筈だから」
凌は、コクリと力なく頷く。
効いてくるとは言ったものの、この熱じゃ、もしかしたら市販薬では無理かもしれない。
近くに救急病院は、あるだろうか。
それとも、救急車……。
最悪の事態を想定しながら、なんとか熱を下げようとタオルや氷を用意する。
汗を拭い、脇の下や太腿のリンパが流れている部分を氷で冷やして水分補給もする。
そうやって、数時間が過ぎていった。