おかしな二人
額に浮く汗を拭うと、凌が心細い表情であたしの顔をじっと見つめた。
「あかり」
「ん?」
黙って次の言葉を待ったけれど、言葉が続かないのか少しの間沈黙が続いた。
その言葉の代わりとでもいうように、汗を拭うタオルを握っていたあたしの手を凌が握る。
熱で熱いその大きな手にギュッと力をこめて、握り続ける。
「りょ……」
「ありがと」
小さく呟き瞼を閉じると握った手の力が緩み、凌はもう一度眠りに着いた。
あたしは、その手からそっと抜け出し、寝室を出る。
英嗣に握られたのと同じ手を、凌が握ったことにあたしの心が切なさを思い出していた。
「英嗣……」
ソファの上に脱ぎ捨てたコートを拾い上げ、ポケットの中から携帯を取り出した。
電話をしようと英嗣の名前を呼び出したところで、あたしは手を止めた。
「もう……、寝てるよね……。それとも、彼女のところかな……」
声に出したことで、余計に胸が苦しくなってしまった。
「おかゆ、作らなきゃね」
誰もいないのに無理矢理な笑顔を浮かべて、あたしはキッチンへと立った。