おかしな二人
「英嗣……」
「ん?」
「凌との事。……何にも、訊かないんだね……」
苦笑いを浮かべて訊ねると、少しだけ困ったような顔をする。
「せやな……、明が話とうなったら、話したらええ。ずっと話しとうならんかったら、それでもええ」
「気に……ならないの?」
「……ならん、言うたら嘘やろうけど。話とうないもんを無理矢理訊きだすなんて、鬼やろ」
そういうと、またケタケタと笑う。
そんな風に笑ってくれるせいか、凌との間に起きたことが、実のところはたいしたことではないようにさえ感じてしまう。
「なんや、どっかに行って気分転換でもと言いたいところなんやけど、年末に向けて仕事が立てこんどるんよ」
英嗣は、すまんなぁ、と声を小さくする。
あたしはその気持ちが嬉しくて、笑顔のまま首を横に振った。
「あのね。もう少し……。もう少ししたら、話、聞いてくれる?」
「ん。わかった」
英嗣は、あたしの頭の上にぽんと手を乗せて立ち上がる。
「年が明けたら、ちょっと暇になる予定やから。そしたら、どっかでかけるか」
な、とあたしの顔を覗き込むと、シャワーを浴びるためにリビングを出て行った。