おかしな二人
「これ。持っていてくれないか?」
凌の掌に乗っているのは、あの時あたしが付き返したマリモの小壜だった。
「うん。凌が買ってくれたお土産だもんね。大切にするね、ありがと」
あの時、きっと言い損ねただろうお礼のセリフを、今はっきりと口にする。
その言葉に、凌は相好を崩した。
そして、代わりというように、あたしは持っていた紙袋を差し出しす。
「御節、作ったの。これ食べてコレクション頑張ってよ。高級レストランの料理には負けると思うけど。お金取らない分、家族の愛情は込めといたから」
手渡した紙袋に驚いたように視線をやり、すぐさまあたしを見た顔は、春のようにあたたかな顔つきだった。
「いい正月を迎えられそうだよ」
そう呟いた時、目に入ったホールに掛かる時計が十二時を指し示した。
「凌。明けましておめでとう」
「え?」
驚いたように、凌が腕時計を確認する。
そうして、クシャクシャな笑顔で言った。
「明けましておめでとう。あかり」
「今年も一年よろしくね」
ニコリと笑みを零すと、子供のときのような顔で凌も笑い返してくれた――――。