おかしな二人
幸せなキス
*
あたしは、すっきりと晴れやかな気持ちでマンションに戻った。
凌とはしばらく逢うことはないけれど、ショーを成功させ、次にお互いの顔を見るときには、きっと昔のような家族に戻っているはず。
掌に握り締めた毬藻を見つめ、そんな風に思った。
あ、でも。
昔に戻るっていうことは、苛め再開?
いやいやいやっ。
そこは、元に戻らなくってもいいからねっ。
一人ブツブツと呟く。
ソファに座りテレビを点けると、二四時間体勢で番組は流れ続けていて、年明け前に見た芸人が、新しい年を迎えた今も、また同じように体を張っていた。
「新年を迎えても、芸風は変わらずか」
あたしよりもずっと年上だろう人が体を張る姿に、苦笑いが零れる。
「芸人て、大変よね」
他人事のように言っていると、眠気に襲われる。
「シャワー浴びて、寝よっと」
マリモの小壜をチェスとの上に飾り、あたしは眠りに付いた。