おかしな二人
「ライヴ、来んかったんやな」
「うん。ごめん……」
財布の中にしまったままのチケットを思い出し、首を竦めた。
「盛り上がった?」
「おう。やっぱり、ライヴはええな。ファンと一体になれた気がした」
楽しそうに話す表情が、とても穏やかでつい見惚れてしまった。
英嗣は、大好きな事を仕事にしているんだなぁ、とキラキラした目が感じさせる。
そして、羨ましくも感じた。
そんな英嗣を見ていたら、凌との事を今聞いて欲しくなった。
クリスマスの時の事も、つい数時間前のことも。
英嗣に、全部話してしまいたくなったんだ。
「あのね、英嗣」
「ん?」
カップを両手で包み、あたしはポツリポツリと凌との間におきた出来事を話していった。
「そうかぁ……」
英嗣は、時々相槌を打つ程度で、最後に一言そう呟くと、何を言うでもなく、冷め始めた紅茶に口をつける。
明け方の空気は少しずつ賑やかさを増し、鳥の囀りや、時々通る車の音が深夜にコチコチ響いていた時計の音を消していく。
その音たちに交じって、うぅっ、と声を上げる哲さんに、あたしは苦笑いを零し、ソファを窺い見た。
「ホント、大丈夫かな」
あたしが言うと、英嗣もソファを振り返り、平気やろ、と笑う。
それから、清々しい朝のような顔で、言ったんだ。
「コレクション。成功するとええなぁ」
「うん」