おかしな二人


「あ、いや、そんなブランドなんておこがましい……」

あたしは、遠慮がちに言う。

てか、酔った勢いでそんなこと言わないで欲しいものだ。
酔っ払いの戯言を信用しちゃいけないのは解っているけれど、本当に買ってくれるのかと、期待してしまうではないか。

「贅沢なんて、言いませんから」

はなから信用せずに愁傷な返事を返すと、ふんっ。と鼻を鳴らし、あたしの上着から手を離す。

水上さんは、そのまま何も言わずにキーを差し込み、エントランスを抜けると、降りてきたエレベーターに乗り込んだ。

あたしも、置いていかれないようについて行く。



< 68 / 546 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop