曖昧HONEY
「ちょっと、来い!」
私の腕を掴んで、人混みの中から連れ出して。
路地に入ったところで、龍ちゃんは私を壁に追い込んだ。
「お前、アイツのこと好きなのか?」
「え…」
「声かけられて、一目で恋に落ちた…とか?」
…まさか。
フルフルと首を横に振る私に、
「だったら、ホイホイついていくなよ!」
怖い顔で、再び声を荒げる龍ちゃん。
「いいか?ああいうのは、一度ヤッたらおしまい。ポイ捨てされて、傷つくのはお前なんだよ!」
「……」
「何があったのか知らないけど…何があっても、自分を大事にしろよ…」
哀しい瞳で。
私を見下ろして、
「…お前が、そんなバカな女になってるとは思わなかった。」
ぽつりと呟いてから、
「…帰るぞ。送ってくから。」
私の手を引いて、龍ちゃんはそのまま歩き出した。
バイトは?とか、さっきの男に一言…とか、いろいろ思いつつも。
私は何も言えないまま、その日はその場をあとにしたんだ。
“その日”は。