曖昧HONEY
「…お前、まだそんなこと言って…」
私を呆れたように見下ろしながら、その手をほどこうとする龍ちゃん。
でも、私は離さなかった。
「ほら、立てってば。帰るぞ?」
「やだ。帰らない。」
「ナオ!おじさんも心配してるんだから…」
「…心配なんてしてないよ。するわけないじゃん。」
「…は?」
「あの人は、自分の“家族”のことで忙しいんだから…」
……もう、止められなかった。
「龍ちゃんは知らないかもしれないけど…」
男手一つで育ててくれたお父さんが再婚して。
まだ20代の、若い“奥さん”が家に来た。
そして、私と半分だけ血の繋がった“弟”を産んだ。
――よくある話。
“家族”から疎外されて、行き場を失った娘が、寂しさのあまり非行に走って、人生を踏み外す…ってやつ?
王道すぎて笑えるけど、私にはそれしか選べなかったんだ。
「あれは私の“家族”じゃないから。あそこは私の“家”じゃない。だから…帰りたくないの。」