曖昧HONEY



「もっとこう…“愛”がある感じ?」

「愛…?」


小さく答えた私に、怪訝そうに眉を寄せる琴子。

なんでそんな顔するわけ?


「そう、愛!なんて言うか…お互いの“好き”が溢れてるような?」


うまく言えないけど…


出掛けてても、早く帰りたい、とか。
早く会いたい、とか思って。

家に帰ったら、一時も離れたくなくてくっついてる…みたいな?

“新婚”ってそういうイメージでしょ?


「…それは“幻想”よ。」


琴子は、私の言葉をばっさりと冷ややかに切り捨てた。


「そういうのは、マンガやドラマの中のお話。現実にはあり得ないわ。」

「へっ?」

「実際の生活はもっと淡々としてるし、甘いどころか苦いものよ。」


…なんか、妙に説得力があるけど。

なんで、琴子がそんなに詳しいわけ?


訝しげな私の視線に気づいたのか、


「私は、身内をいろいろ見てきたから。経験はないけどリアルな知識はあるの。」


さらっと言い放った。


「“結婚”って、奈桜が考えているようなものじゃないと思うわよ?」



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