曖昧HONEY
「はぁーっ…」
ドアの前で、もう一度大きなため息。
誰もいない家に帰るだけでも憂鬱だって言うのに…
「だったら、その気持ちをちゃんと伝えなさい。」
琴子に言われた言葉が蘇る。
――あの後。
私の気持ちを確認した琴子は、それはそれは的確なアドバイスをくれた。
「始まりが始まりなんだから。はっきり言わないと伝わらないと思うわよ?……お互いに、ね。」
「……っ」
「ハイ。じゃあ、この話は当分おしまい」
「え…?」
「それがクリアできるまで、私は一切、この話は聞かないから。」
……と、まぁ。
唯一の相談相手に突き放されてしまったわけで。
「そんなこと、簡単にはできないよ…」
今さら、さ。
そもそも、龍ちゃんとゆっくり話す時間なんて…
「……帰ってる。」
玄関を開けて。
この前同様、目に飛び込んできたのは…
「あれ…?お客さんかな?」
龍ちゃんのと、もう1人分の男物の靴。
とりあえず、入るか。