曖昧HONEY



「はぁっ?」


私の言葉を聞くなり、目を丸くして。

一瞬だけぽかーんとしたものの、龍ちゃんはすぐに私のほうに近づいてきた。


「急にどうした?誰かに何か言われたのか?」

「急じゃないもん。ずっと思ってたことだもん。それに…龍ちゃんが言ったんでしょ?」

「は?」

「“形だけ”だって。」



…あ、間違えた。

正確には、龍ちゃんの友達が言ったんだ。


こうなったら、もう別にどっちだっていいけど。



「この結婚は“形だけ”なんでしょ?“つなぎ”なんでしょ?」

「ナオ…」

「“愛情”のカケラもない私には、手を出す気にもならないんでしょ?」

「…っ、お前、まさか聞いて…」



焦ったように口元を押さえる龍ちゃん。

……やっぱり、あれが本音なんだね?


もう、どうにでもなれ!




「だから、もういいの。

どうせ…“好き”なのは、私だけなんだからっ!」










……言っちゃったよ。

あー、もう。



「え…?」



ほら、龍ちゃん困ってるし。

どうしよう??

いたたまれなくなって、
ぎゅっと目を閉じた…とき。









「お前って、俺のこと“好き”だったの?」





信じられないような言葉が聞こえた。


< 32 / 50 >

この作品をシェア

pagetop