曖昧HONEY
「わぁっ!寝坊した!」
――朝。
いつもの叫び声と、隣で人が飛び起きる衝撃で目が覚めた。
…また、か。
「今日も遅刻だよぉ…」
情けなく呟いているわりに動きは機敏で。
クローゼットを開けて、既に着替え始めているみたいだ。
その姿を視界の端に捉えつつ、布団を引っ張り直して俺は再び瞼を閉じた。
……のも束の間。
「ちょっと、龍ちゃん!」
ガバッと。
被っていた布団を勢いよく剥がされて。
「何、呑気に二度寝してるの?」
寒さに身を縮める暇もなく降ってくる不機嫌な声。
俺を見下ろす視線。
瞼を開けなくてもわかる。
だって、いつものことだから。
「龍ちゃんも起きなきゃダメでしょ?朝から講義だって言ってたじゃない。」
「…自主休講。」
「ズルイ!じゃあ、私もそうするっ」
言い放って、ゴソゴソとベットに潜りこんでくる小さな身体。
それは、ついさっきまで、ここにあった温もりに違いはないけど…
「ダメ。“高校生”はちゃんと学校に行きなさい。」
俺は、容赦なく追い出した。