DL♥ロマンティックに抱きしめて。

目をやれば、優しく微笑む桐谷先生。

ドキリと胸の奥が小さく跳ねる。

カウンターに肘を着き、手のひらで頭を支えながら話しかけるその姿は、きっと何人もの女性を虜にしてきたであろう”大人の男性”そのものだ。


「は…はい。わ…私、こういう場所来た事無くて…。」


緊張に押しつぶされそうな私のそんな言葉にクスクスと笑った桐谷先生は、「そう緊張しないで。」そう言って、私の頭にポンポンッと手を乗せてきた。



――桐谷先生って、こういうの慣れてるんだろうな…。



慣れない行為に戸惑いを隠せない私の前に、並々注がれた美味しそうなビールが届いたのはそれから数秒後。

お洒落なグラスに注がれたソレは、きっと居酒屋ではなかなかお目にかかれない物で。

一瞬にして緊張が驚きに変わってしまった私は、やっぱりまだまだ子供なのかもしれない。

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