DL♥ロマンティックに抱きしめて。
―――!!?
そう言い残しフラフラと頭の横で手を振る後姿に、「桐谷っ!」と叫んだ俺の声は何の意味も示さず、ただ奴の出て行ったドアがゆっくりと閉まるのを目で捉えている事しか出来なかった。
静まり返った店内。
残るは、耳に届くジャズの音と手の内の温もり。
その存在に目をやると小刻みに震え、先程まで俺も見ていたドアをじっと見つめたままだ。
そしてゆっくりと上がる目線。
相当飲まされたのかまだ虚ろなその目元には、溢れそうな涙が溜まっていた。
そして、静かにその唇が開く。
「…が…がもぉ…せんせ…」
「…もう、大丈夫だから。」
そんな俺の言葉に、コクンと頷いた彼女は再度俺の胸に顔をうずめた。