DL♥ロマンティックに抱きしめて。
「…ごめんね。あの子はね、半年ほど前に事故で父親を亡くしているんだ。」
「…え」
俺の言葉に彼女が顔を上げる。
「自動車の衝突事故だった。あの子も車に乗っていてね。後部座席に乗っていたあの子の命は助かったけれど、一時の記憶喪失って言えば分かるかな。父親の存在を思い出せなくなってしまったんだ。緊急手術から数日たったある日。俺が口腔内を確認するためにあの子の母親と病室へ足を運んだときに丁度彼が目を覚ましてね。その時に彼の目に映ったのが、母親の隣にいる俺で。その場で違うと伝える事が正しかったのだろうけど。俺にはそれがどうしても出来なくて。…いつかは言わなきゃいけないんだけれど…。」
話終わり、ふと彼女を見ればポロポロと落ちる雫。
「わ…私……。何も知らないで…ごめんなさい。」
もう、本当に君は…。