DL♥ロマンティックに抱きしめて。
その声と共に、何度目かの襖が開けられる。
コトッと音を立てて置かれるは、金色のソレが並々注がれているジョッキ。
ほろ酔いをすでに通り越しているであろうトロンとした目のくみが、なおも嬉しそうにそれを手に取った。
「明日、実習はじまるけど大丈夫?」
クスクスと笑いが漏れる中、そっと声をかければ、
「らいじょうぶ!らいじょうぶ!このぐらい平気れすって!」
そう自慢げに答えるもんだから、面白くてたまらない。
…これじゃあ、家にビールサーバーでも用意してた方がいいか?
ニコニコと笑顔でジョッキを傾けるくみの頭をそっと撫で、俺も自分のグラスに手を伸ばした。
入店して、約1時間。
隣の席に耳を傾けるも、特に気になる事は無く、先程から他愛も無い事ばかりが聞こえる。
楽しそうな女性の笑い声が響く中、張り詰めた緊張感が徐々に消えていくのが分かった。
…俺の気にしすぎか?
何も無いなら、それに越したことは無い。
再び、グラスに手を伸ばし、その中身をコクッと飲み込んだ。