DL♥ロマンティックに抱きしめて。


「確認したものだと思い込んでいた…俺にも。

責任はある…。



……本当にすまない……。」




そう言って、先生が頭を深く下げるのを私の目は捉えているのに、

頬を伝うものを感じる事さえ出来ないでいる私。



…なにそれ。

…そんな事って……。



いつも笑っていたお母さん。

その姿が脳裏によぎっては消える。

苛立ちにも似た感情が込上げ、涙が膝の上で握り締めた手にぽたぽたと落ちていくのが分かった。

慌しい大学病院。

一日に何十人、何百人と患者が来る中、もしかすると、親知らずの抜歯なんてそんなに気にかけるものじゃないかもしれない。

だけど、だからって、全ての人が一緒なんかじゃない。

医者として、その人一人ひとりの状態を把握して、処置をするのが当たり前じゃないの?

きちんと確認していたら…お母さんは…




――その時。





『…5年前の事は忘れなさい。』




電話越しに聞いた優しいお母さんの声。

それが頭の中に響き渡った。

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