DL♥ロマンティックに抱きしめて。
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「…桐谷先生が?」
翌日のお昼休み。
午前の実習を終え、お昼ごはんを早めに切り上げた私は、先生に連れられ大学病院の屋上スペースにあるカフェに来ていた。
問題が解決した安心感の中、耳に届く内容に驚きを隠せない。
「あぁ。まさか俺もそんな事だとは思ってもみなかったよ。」
桐谷先生が、お母さんを担当したドクターの息子だったなんて。
最初から私の存在、先生の過去を知った上で、接してきた桐谷先生。
桐谷先生の父親でもあるドクターがした事にショックを受けた事は事実だけれど、それを知りながらも日々私達と関わってくれた桐谷先生の気持ちを思うと、やりきれない気持ちになってしまう。
先生がしてきた事は、間違っていたわけじゃない。
けれど…。
「けど、まぁ。」
その声に俯いていた顔をそっと上げる。
「本人は、もうその事よりも、今の俺に対しての不満の方が大きいらしい。過去の事に怯え、くみと向き合おうとしなかった俺。”自分に自信を持てない貴方”そう言われたよ。」
ハハハと力なく笑うその表情は、その言葉に納得しているようで。
同時に、桐谷先生が実は先生の事を認め、医者としても尊敬しているのでは無いかと暖かい気持ちになった。