DL♥ロマンティックに抱きしめて。
患者の落し物かもしれないと、受付に届けようかとも考えたが、そんな時間は無い。
鬼のような山田さんの顔が浮かび、後で届けようと白衣の内ポケットにそれをねじ込んだ。
――そして、今に至る。
さっき拾ったクマが、あろう事か目の前の君”蒼井くみ”の物だったなんて、想像もつかなかった。
それを手にした途端、溢れんばかりの笑顔で俺に微笑み返すから。
余計に、俺の奥の傷がズキズキ痛む。
たった2週間。
優しくすればいいだけで。
きっとそうしなくても、
彼女はあの”過去の俺”には気づかないから。
それでもそう出来なかったのは、あの時見る事の出来なかった君の笑顔が優しすぎて。
込み上げてくる、
”ある感情”に対しての”罪悪感”に
押しつぶれそうだった。