DL♥ロマンティックに抱きしめて。
『…は?』
去年の終わりに此処にやってきた桐谷正吾。
俺に対して滅多に世間話などしない奴が声をかけてきたのに少なからず違和感は感じていたのだが。
『くみちゃんっすよ。くみちゃん。可愛いっすよね~。』
『…何が言いたいんだ?』
奴の口から出た名前に、できれば違う話題であってほしいという俺の願いは打ち砕かれた。
こいつの噂はろくなもんを聞いた事が無い。
仕事に関しては素質はある奴が、プライベートでは女を選ばず弄んでいるらしい。
―…奴が、蒼井くみに目をつけた理由は…?
『いやぁね~、実習生の最終になって蒲生先生が担当を希望なんかするから。元々は俺の担当だったはずなのに。』
『…生憎、俺にも多少ゆとりが出来たもんでね。人生で1度ぐらい、実習生に教える立場になってもいいだろ。』