恋愛
いつもの夜
もう人もまばらなこの時間…
それぞれが指定席へと乗り込んでいく。
私もいつもの場所へとたどり着いた。
電車の心地よい揺れに流されないように遠くをみつめていた。
停車を知らせるアナウンスが車内に響いた。
ドアが開くと若い男の子が斜め前に座った。
おもむろにバッグから書類の束を取りだし読みだした。
車内でも仕事?
まぁ、そんな人もいないわけじゃない…
そんな事を思っていると携帯が鳴った。
静かな車内に響いた着信音は、すぐに鳴りやみバッグから取りだそうとすると携帯が見当たらない。
私の携帯だと思ったけど…
ふと視線が気になり目をやると書類を読んでいた男の子が私の足元を指差していた。
視線を足元に移すと私の携帯がそこにあった。
慌てて拾い上げるとメールの着信を知らせる光が点滅していた。
学生時代の友達からで結婚式の招待状を出すので住所を教えてほしい
という内容だった。
5年ぶりの連絡がこれか…
仕事が忙しいと自然に友達とも疎遠になる事がある。
百合子もそのうちのひとりだった。
きっと人数合わせに呼ばれたのだろうと携帯をバッグに戻し停車のアナウンスが聞こえたので車内を後にした。
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