素敵彼氏の裏の顔【番外編】
店の前まで戻ると案の定二人の姿はなく、
「あっちに連れ去られました」
と、古びたビルの方を指さす。
「誰も止めてくれねぇのかよ」
大宮は低い声で呟いた。
「神木、今のお前の腕は?」
「昔に比べたら、今は弱い」
当然だ。
サークルしかしていないし、大して鍛えてもいない。
だけど……
「きっと、普通の男には負けない」
そう言った俺を見て、大宮は笑った。
……爽やかで正義感に満ち溢れた笑いだった。
こんな大宮を見て思う。
大宮は、昔からこんな男なのかもしれないと。
俺みたいに憂さ晴らしで喧嘩するクズとは、部類が違うと。
走りながら大宮に言った。
「大宮のこと、誤解していたかも」
すると、
「俺だって」
大宮は再び爽やかに笑った。