素敵彼氏の裏の顔【番外編】
ー蒼sideー
「今日は蒼のおごりな」
出前弁当が九個乗った台車を引きながら、賢一が言った。
俺は顔を歪めて賢一を見る。
「優弥のおごりでいいじゃん。
優弥が一番金持ちだしぃ!」
「俺もそう思う。
でも、蒼が賭けで負けたんだぜ?」
そう言って賢一は舌を出した。
そう。
俺はくだらない賭けをしてしまった。
カラオケで、Fの歌で百点が取れるかどうか。
弁当を賭けて、久しぶりに熱唱した。
俺がカラオケで本気を出すなんてありえない。
でも……
結果は94点。
慎吾が言うには、カラオケには高得点を出すための歌い方があるらしい。
そして、俺の歌い方には癖があるらしい。
ただ、どう言い訳をしても俺の負けだった。