俺の姉(+従姉)たちが個性的すぎる件について
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休み時間。青磁の席近くでお喋りしてると
「久保ー。お呼び出しだよー」
ドア付近の席の女子から呼ばれた。
「りょーかーい」
んじゃな、と話途中の青磁に笑いかけてからドアに向かった。
「はい、久保です」
ドアの前に立ってたのは、内気そうなツインテールの女の子。
ギャルっぽい子じゃなくてよかった。たまに逆ギレされるから。
「…どこか移動する?」
「えぇっと、すぐ済むのでいいです…」
「そう?」
待つこと数秒。
少しモジモジしていたその子は、後ろに回していた手を前に出した。
下を向いたまま、両手で俺の目の前に差し出されたのは、白い封筒にファンシーな柄が描かれた手紙。
ご丁寧に『久保くんへ』と、女の子らしい小さく丸まった字で書いてあった。
これは…アレだな、うん。
「好きです!読んでください…!」
緊張で声が少し震えてる。
教室のドアの近くなもんだから、野次馬目的のクラスメートの男子や、悪気ない同級生からの視線が突き刺さる。
取り敢えず、野次馬野郎どもには睨んで去るように伝えた。
「…手紙、ありがとう」
女の子の手から手紙を受けとる。
期待に女の子の顔が輝いた、と同時に野次馬たちの顔も輝いた。
「でも、君の気持ちには答えてあげられないんだ。それでもいい?」
女の子は唇を少し噛んで
「わかりました…」
小さく言った。
と同時に野次馬たちが一斉に落胆する。
…野次馬がものっすごくウザイんだが。
「手紙はちゃんと読ませてもらうから。ありがとう」
最後の言葉に、少しだけ笑顔になって女の子は立ち去った。
「おい、久保!」
「一瞬オーケーしたかと思ったじゃねーか」
「ばっかやろう、他人の告白現場見てんじゃねーよ。さっさと散れ!」
「わぁ!久保くん、酷いわ、私たちのことむげにして!」
「今だけ女言葉使うの止めろ!キモい!!」
ひっでぇ、といいながら男子共は散らばった。
やれやれ。ため息をつきながら青磁の元へ戻る。
「ただいまー」
「…かえり。今回の子は随分大人しかったな」
「まぁ暴れられるよりいいだろ」
前にギャルっぽい子を断ったとき、逆ギレされた上に軽く暴れられ、ちょっとした騒動になったことがあった。
『逆ギレ女子の暴行事件』と、学年では結構有名らしい…というのが青磁からの情報。
俺の腕には痣が残り、それから、派手な子が告白してきた場合は、より丁寧に相手をするようになった。
「それ以前に、お前の断り方が親身すぎる。それがモテる原因の一つなんだよ」
「そうか?でも女子、泣かせたり怒らせたりしたら面倒じゃん。白い目で見られるのは俺らだし。
ある程度丁寧に応対しないと」
「…手の施しようがないな」
「何の?」
「お前の」
呆れ顔の青磁に
よくわかんねーな、としか思えなかった。