俺の姉(+従姉)たちが個性的すぎる件について
***
「ただいまー」
寝坊したせいで、水筒を忘れてしまった。
あー喉乾いた。何か飲も。
「…時雨おかえり」
珍しく雨月姉が迎えてくれた。
何故かぐったりしている。
「雨月姉、今日部活なかったのか?」
「あぁ。
…今日来てるぞ、アイツが」
「えっ?会社は?」
「早くあがれたんだって」
軽く頭を押さえながら、聞いておく。
「…アルコール、もう入れた?」
「いや、まだ」
とりあえず一安心。
リビングを覗くと
「千寿ちゃん。伯父さんと伯母さん元気なの?」
「んー。最近帰ってないからわっかんないや」
見えたのは、キッチンで夕食を準備している羽衣姉と、テーブルに座って話している一人のスーツ姿。
「おー時雨じゃん!おっかえりー」
こちらを向いてにかっと笑った。
あれ、意外と登場早かったな。
小路 千寿-Kouji Senju-
俺ら、久保姉弟の従姉。
母さんのお兄さんの娘で、現在社会人。某有名化粧品メーカーに勤める、キャリアウーマンなのだ。
年齢は…よく知らない。二十代かとは思うけど、前に聞こうとして殺されかけたから。
独り暮らしを『とても楽しく満喫している』独身で、たまに俺らのところに遊びにくる。
あ、ちなみにかっこの部分は、千寿姉が前に自分で言ってたこと。
「ただいま。何か飲むもんあるー?」
「麦茶、作ってあったと思うけど」
「ん!あったあった」
グラスに注いで、一気に飲み干す。
麦茶は程よく冷えていて、体を冷やした。
「はー!うまっ」
やっぱり水筒は忘れるべきじゃないな。
「じゃあ、手伝うよ、羽衣姉」
「まず荷物、上にあげてきなよー」
「ほーい」
と、キッチンを出ようしたその時
「あーー!!」
と響き渡る千寿姉の声。
ってか無駄に声でかい。
「何だよ、うっせぇな」
耳を押さえながら、声の出所を見ると
「何これ〜」
ヒラヒラと手をふる千寿姉の姿が。
近くに俺の通学鞄が何故か落っこっていて、
手には見覚えのあるファンシーな絵の封筒
…って、おい!
「ばっ、か!何してんだよ千寿姉!!」
慌てて取り返す。
ニヤニヤとした千寿姉の顔に若干引いた。
「時雨がラブレターもらってるー!!」
「ら、ラブレター!?」
ガシャンとキッチンから何かが落ちる音がした。
羽衣姉…
ラブレターで反応するってどんだけ…
「何ー、モテてるんじゃん、時雨。
それで?オーケーしたの?」
野次馬丸出しの従姉。
軽くオッサン化してないか?
またまたうんざりしながら
「断ったよ!」
と言い捨て
「いいだろ、別に!」
鞄と手紙を持って、部屋にいった。