冷蔵庫に願いを
「さむっ……」
 想像よりも温度の低い外の風に少し驚かされた。普段こんな時間に出歩かないから知ることもなかったことだ。
 静かな町に私のかすかな吐息と靴が地に触れる音が響く。私の家は度田舎ってわけではないけれど、とても都会とは言えないようなところだ。
 こんな時間のせいか、誰ともすれ違わない。なんだか歩いても退屈で、普段はあんまり見ない星を見ようと空を見上げる。しかしあいにくのお天気。雲に覆われているのか、星は一つもそこにはなかった。
(思ったより、外も暇だな。ただ寒いだけじゃん)
 ポケットからケータイを取り出し時間を確認。12:15。どうやら日付をまたいでいたようだ。
 もしも私だけ昨日に取り残されていたら?
 外の空気のせいだろうか。なんだかそんなどうでもいい自問自答を繰り返したくなる。
 というより、妄想が好きなのかもしれない。物語の主人公は自分。物語を紡ぐのも自分。自分の生きたい世界、なりたいもの。決して手に入れられないからこそ、おもしろい。
「バカみたい。何かっこつけてんの」
 つくづく独り言が多い。

 でもこんな静かな夜の街には、そんな自分の声が温かい気がした。
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