その一枚が恋だと気付くのに、どれほどの時間が必要だろう
足早に歩きながら人気のないところを探し、とりあえず校舎の裏側にある一年の駐輪場で足を止めることにした。


「どこで聞いたんだよ」


「結構、噂になっているぞ。

『最近、あの二人よく一緒にいる』って。

いつからだよ」


部室でしか二人でいるときがなかったから誰にも知られていないと思っていたのだが、まさか噂が広まっているとは。

強く瞼を閉じ、大きくため息をつきながら下を向いた。

別に知られたくなかったわけではない。

それでも知られるとどこか恥ずかしいような、表現し難い気持ちが胸の中に込み上げてくる。


「付き合っているとか、そんなんじゃないよ。

二週間前に木ノ内さんと初めて話したばかりだから」


誰のか分からない自転車の後ろにまたがり天を仰ぐと、秋の真っ青な空がやけに近く見え、雲は手を伸ばせば届きそうだった。


「二週間前に初めて話してって、お前にしては随分と急な展開じゃないか。

このまま告白するのか」


「な、何言ってんだよ」


天を仰いだまま後ろに自転車と一緒に倒れそうになり、慌てて態勢を立て直した。

こいつはよくそういうことを平気に口にできるものだ。


「好きなんだろ、木ノ内さんのこと」


更にそういうことまで口にするのか。
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