その一枚が恋だと気付くのに、どれほどの時間が必要だろう
彼女の名前は木ノ内涼子。

成績はクラスでも常に上位だが、先ほどの本人の言葉通りクラスではあまり目立たず、女子の中心グループと話している姿を見たことがない。

恐らく僕も彼女と話すのは初めてだ。


「和中翔吾君」


名前を言われて、思わず背筋が伸びた。


「私だって、同じクラスの人の名前くらい知っているよ。

写真、好きなんだね。

凄くこの一枚からそれが伝わってくる」


「俺・・・

写真部だから。

文化祭で作品を出展するから、他にもまだたくさんあるよ」


自分の写真が面と向かって褒められたのは初めてのことで、それがこんなにも照れることだということを今知った。


「じゃあ、他の写真もまた見せてよ」


これが僕たちの夢のような二週間、高校生活最後の文化祭の始まりだった。
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