花火
 

「……先生?」



「ん?」



モヤモヤと考えていると、リンがふと本から俺の方に目を向けた。


やっとこっちを向いてくれたと思ったけど、その表情は何だか曇っているように感じた。


何だ?本が面白くなかったのか?



「今……」



「ん?」



「…………ううん、何でもないです」



何かを言いたそうなのに、口をつぐむリン。


……何だよ?


途中で止められると気になるし、リンが考えてることは全部知りたいのに。



「リーンちゃん?言いなさい。先生が相談にのってあげるから」



仕方なく教師の顔になって、あやすようにリンに言葉をかける。



「!ズルいです!こんな時だけ先生になるとか!」



「そ?教えてくれないし、リンが“先生”なんて呼ぶからだろ?」



「!!」



意地悪を言うと、リンはムッとした顔をして、俺から目を反らした。


怒らせたかなと思ったけど、リンが怒るところを見るのは、嫌いじゃなかったりする。


だって、本音を見せてくれてるってことだし。


俺の前では素直なリンでいて欲しいっていう、俺のワガママでもある。

 
< 118 / 178 >

この作品をシェア

pagetop