花火
「……先生?」
「ん?」
モヤモヤと考えていると、リンがふと本から俺の方に目を向けた。
やっとこっちを向いてくれたと思ったけど、その表情は何だか曇っているように感じた。
何だ?本が面白くなかったのか?
「今……」
「ん?」
「…………ううん、何でもないです」
何かを言いたそうなのに、口をつぐむリン。
……何だよ?
途中で止められると気になるし、リンが考えてることは全部知りたいのに。
「リーンちゃん?言いなさい。先生が相談にのってあげるから」
仕方なく教師の顔になって、あやすようにリンに言葉をかける。
「!ズルいです!こんな時だけ先生になるとか!」
「そ?教えてくれないし、リンが“先生”なんて呼ぶからだろ?」
「!!」
意地悪を言うと、リンはムッとした顔をして、俺から目を反らした。
怒らせたかなと思ったけど、リンが怒るところを見るのは、嫌いじゃなかったりする。
だって、本音を見せてくれてるってことだし。
俺の前では素直なリンでいて欲しいっていう、俺のワガママでもある。