花火
 

──……


──ひゅるるるる~


ドーン!


夜空にきらびやかに咲く華。


年に一度、決まった日にだけ、この街に大きな華を咲かせる。


暑さに不快になる日が多いけど、俺は華が見れるこの季節が嫌いじゃない。






──俺は仕事帰り、建物の隙間から覗く花火を見ていた。


会場から少し離れたこの場所からでも、大きいものなら十分見えることは知っている。


会場に行くのもいいけど、少し離れた静かな場所で見る花火もなかなかいいものだと思う。


……そう思うのは、俺が年を取った証拠だろうか?


ふっと嘲笑し、歩道のガードレールに寄っ掛かり、ポケットを探る。


朝以来、手に持つことを許されなかったものを取り出した。


──カチッ、シュボッ



「ふ~……」



やっぱり疲れてる時はタバコに限るな。


職業柄、職場じゃ吸えねぇし。


やっと落ち着いたと思った時、再び光が見えた。


……ドーン!


俺は花火を眺めながら、一服していた。

 
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