花火
 

タバコが2本目に突入して少し経った時だった。


──カラン


花火の音に混ざって聞こえてきた音に、俺は目を向けた。


数メートル先にある影。


浴衣を着た女だと、そのシルエットからわかった。


花火が上がる方向から俺の方に向かって、カラン、コロン、と音を立てながら、ゆっくりと近付いてくる。


……まだ花火の中盤なのに、もう帰ってるのか?



「──……」



俺の一番近くにある街灯が女の姿を照らし、その姿がはっきりと見えた。


その顔には、一筋の涙が光っていた。


泣いてる……?


俺はその姿に目を奪われてしまう。


涙も、表情も、浴衣も、首もとにかかる後れ毛も。


……あまりにも綺麗だったから。

 
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