花火
 

今思うと、雅也のことは好きだったけど……ただ傍に私のことをわかってくれる人がいて欲しかっただけなのかも……。


……『恋』なんかじゃなかったのかもしれない。


……そんなの、最低だ。


もしかしたら雅也もそれに気付いてたのかな……。


だから、雅也の心はあっさりと私から離れた。


きっと、私なんてフラれて当然だったんだ。







──そんなことをぐるぐると考えながら、花火大会の会場から帰っていた時に出逢ったのが、田辺先生だった。


自分勝手でワガママなことを言って自棄を起こしていた私に付き合ってくれて。


しかも……一緒に落ちてくれた。


まさか一緒に落ちてくれるなんて思わなかったけど……


でも、あの夜のコトで救われたのは間違いないんだ。






……先生はどこまで一緒に落ちてくれる?


一晩だけのコト、なんてことはわかってる。


誰にも言う気なんてさらさらなかったけど、学校で私のことを見つけて驚いてる先生の顔を見たら、それを試したくなった。


別に脅そうとかじゃなくて、話したかったんだと思う。


一緒に落ちてくれた先生なら、私のことを理解してくれるんじゃないかって。


私の言葉の中に隠された意味を読み取ってくれるんじゃないかって。





……本当は先生、優しい人だよね?


本当の私を知っても、投げ出さずに傍にいてくれたから──。

 
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