花火
02
*+.。.+*.。.
「あ、田辺先生だー。いつ見てもカッコいいよね~。私も先生に国語教わりたーい」
「うん!目の保養だよね~授業の度に見れるなんて、他のクラスが羨ましい!しかも、あのセクシーボイスで朗読とか……!」
「きゃー!ヤバイっそれ!」
移動教室からの帰り、友達が田辺先生の姿を見つけ、他の友達もきゃっきゃとお喋りを始める。
友達のそんな会話に、私が敏感に反応するようになったのは最近のこと。
前はふーん、くらいで聞いてたのに。
今は先生の名前が出ただけで過剰に反応してしまうから、それを抑えるのにいつも必死だ。
……顔に出てなければいいけど。
こんなこと、今までなかったから、自分がどんな顔をしているのか、ちゃんとポーカーフェイスを保っていられているのか、少し不安に感じているんだ。
1階下の渡り廊下にいる先生を、友達と一緒になって見る。
先生は女子生徒数人に囲まれて、穏やかな表情で接していた。
明らかに、おしゃべりに参加させられてる感じだ。
少しした時、女子生徒と話す先生に、ふと“整った”笑顔が浮かんだ。
隣にいる友達からは『笑った!笑顔も爽やかだよね~!』なんて聞こえてくるけど……
──あ、あの笑顔、作ってる。
なんて心の中でつっこんだりして。
本当の先生の顔を知ってるのは、学校の中ではきっと私だけなんだ、って思うと優越感感じちゃったりして、私の顔はつい緩んでしまう。