花火
 

会話がようやく終わって女子たちが去っていった時、ふと先生の目線がこっちを向いた。


──ドキッ


私の心臓と身体が跳ねた。


ドキドキと鼓動が速まっていく。


顔には出していないはずなのに、戸惑う私の心がお見通しというかのように、先生はにこっと笑みを浮かべた。


……さっきとは違って、作りものではない笑顔を。



「──っ!」



「えっ、嘘っ!?今こっち見て笑ったよね!ていうか、笑顔向けられるとかヤバい!」



きゃっきゃと盛り上がる友達。


でも、私は気が気じゃなかった。


……先生は確実に、私に向かって笑ったから。


先生だけ余裕な顔してズルいよ……。


この前言ってたみたいに、先生は本当にスリルを楽しんでるみたいだった。


私ことをからかうように、笑う。


ただそれだけのために。


何で、そんな危ない橋を渡ろうとするの?


私に関わったって何も面白くもないし、ましてやデメリットはあっても、メリットの欠片さえないのに。







廊下や全校朝礼で先生を見掛けるたびに、先生の目線は私を向き、そんなことが続いた。


……そのたびに私の心の中は先生で埋め尽くされ、いつの間にか、いっぱいになって溢れそうになっていた。

 
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