花火
「あー……、わりぃけど、そういうの間に合ってるんで。ごめんな?」
お得意の作り笑いを浮かべる。
酒に酔った勢いで~とかそういうのはごめんだし、面倒に巻き込まれるのも立場的に困る。
「……いいじゃん……」
「え?」
突然、女の目からポロポロと涙が溢れだした。
「ちょ……おい?」
何でこのタイミングで泣くんだよ。
こんなんじゃ、オレが泣かせたみてぇじゃないか。
突然の涙に、柄にもなく少し焦った。
「……いいじゃん……少しくらい胸貸してくれたって」
「──……」
………不覚にも、その涙と拗ねた表情に心臓が跳ねてしまった。
25年生きてきて、初めての感覚だった。
「……もういい。他探すから」
「は?」
女はそう言って、再びカラコロと音を立てて歩き出す。
ていうか、他探すって……
そんななりじゃ、危なすぎるだろ!
襲ってください、と言ってるようなものだ。