花火
女がガードレールに寄り掛かったのを見て、俺も適度な距離を開けて寄り掛かる。
さっさとあやして帰ろ。
「……で?何で泣いてんの。男にでも捨てられたか?」
「……」
無言ってことは図星か?
そう思って女の顔を覗き込むと、女の唇の端がくっと上がり、口に綺麗な弧を描いた。
でも、すぐにそれはなくなり、無表情に戻る。
「──……ノーコメント。話なんてないって言ったじゃん。黙ってそこにいればいいから」
「……んだよ、それ。話す気ねぇなら帰るぞ」
「──……」
まただんまり、かよ……。
はぁ、まったく。
こんなめんどくせぇこと、仕事だけで十分だっての。
でも、まぁ。
仕方ねぇから、そのだんまりに少しだけ付き合ってやるよ。
俺はタバコを取り出して、火をつける。
「ふ~……」
上を向いて煙を吐き出す。
──ドーン!パチパチパチ…
大輪の華が夜空に舞い上がった。
「おーすげぇデケェ」
そう呟いてチラッと女を見下ろしたけど、女は俯いていてその表情は見えなかった。