花火
 

「ふー……」



煙を天に向かって吐き出す。


あーそういや最近、女抱いてねぇな。


近いうち、誰か誘うか。


後腐れのない女を。


めんどくせぇのに、欲だけは尽きなくて、それもまためんどくさいんだけど。





仕掛け花火の時間に入ったのか、周囲は静まり返る。


チリリリ、と虫の音が聴こえるだけだ。


ふと花火が上がっていない方の空を見上げると、月がぽっかりと浮かんでいた。


──フルムーンは明日か。


どうりで花火が上がってなくても、空が明るいわけだ。


屈んで、ちり、と道にタバコの先を押し付ける。


そして、俺がタバコを吸い殻入れに入れた時だった。



「ねぇ」



女が俺の腕をツンと引いた。



「あ?」



俺は女の方に顔を向けた。



「──!」



急に首もとに伸びてきた腕。


そして──

 
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