花火
「────大翔……、嬉しい」
「っ」
二人がいる方向から耳に入ってきた声に、ビクッとした。
……大翔、って先生の名前……?
見なければいいのに、私はつい二人の様子を木の陰から覗いてしまった。
……でも、すぐに後悔した。
先生の腕に引き寄せられる、女の人。
……そして、先生の唇が女の人に触れた。
キス。
「──っ」
頭をがつんと殴られた感覚が私を襲った。
好きな人が他の人とキスする姿なんて、見たくない……っ!
……女の人を引き寄せたのも、女の人にキスをしたのも、先生からだった。
それが意味するのは、先生はあの女の人のことを好きだということ。
何よ……相手いるんじゃん。
こんな公衆の面前でイチャつける彼女が。
それなら、あんなこと言わないでよ……っ。
私のこと、気にしてるようなセリフなんて……。
キスなんて、しないでよ……!
──先生は本当に悪い男だ。