愛するということ。
あ……。
恥ずかしくなって、あたしは静かに自分の席に座り直した。
「なになに、知ってる人?」
右隣の席の子が話しかけてくるけど、何とも答えづらいので、聞こえないふりをする。
……だって、今、教室に入ってきたその転入生は、2日前に図書館で会ったあの青年だったから。
にしても、さっきのあたしの大声にも無反応だなんて、向こうはあたしのことは覚えていないのかな…?
上原くんというその青年は、黒板の前で先生の横に並ぶと、穏やかな表情でクラスのほうに顔を向けた。
「じゃあ、自己紹介してくれる?」
「はい、上原陽向(ウエハラ ヒナタ)です。よろしくお願いします。」
先生の言葉に、微笑みながら卒なく挨拶をする上原くん。
再び、女子の間で黄色い声がざわつく。
「突然の転入だけど、みんないろいろ教えてあげてねー。
それじゃあ、上原くんは…1番後ろの空いてる席に座ってくれる?」