交換ウソ日記
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好きになってしまった。
好きになっても仕方のない人を。
返事を朝早くに瀬戸山の靴箱に入れて、教室に戻ってきてから机にため息を落とす。
……なんで、こんなことになってしまったんだろう。
瀬戸山からの言葉はすべて江里乃に向けられているものなんだって、わかっていたのに、今更落ち込むなんて。
それでも江里乃に休みの予定を聞いてまでして江里乃のふりをして返事を書いている。
その理由はもう、“ふたりがうまく行けばいい”なんていうものじゃない。ただ、ウソをついてまで交換日記をしている相手が私だっていうことばバレたくないだけ。
バレて、嫌われたくないだけ。
私に向けられるあの笑顔に、深い意味はなくとも、それを失いたくないだけだ。
結末は変わるはずもないのに……。
私が江里乃になれない限り、ウソが本当になるわけもない。
先延ばしにして逃げているだけ。
「……やめたい、なあ」
交換日記も、江里乃のフリをすることも……瀬戸山が好きっていう気持ちも。
気づいてしまうと、一晩で一気に気持ちが膨らんでしまう。
知らないふりでもできればよかったのに……。
「おはよー」
教室に入ってきた江里乃が私に声をかけてきて、顔を上げた。
「どーしたの、元気ない顔して」
「寝不足なだけだよ、おはよ」
「勉強してたの? 無理して風邪でもひいたら元も子もないよー?」
友達思いで、気持ちをはっきり言う、しっかり者の江里乃。私が男でも、江里乃に惚れるだろう。
わかりやすいくらい素直な瀬戸山と、裏表のない江里乃。想像するだけで、お似合い。外見からしてお似合いだもの。