交換ウソ日記
でも、瀬戸山はそれをわかって私に接してくれている。
私の面倒な性格をわかってくれている男。
瀬戸山は、わかってくれる。瀬戸山もきっと自覚してくれているから、そんなふうに言ってくれるんだよね。……それって、どういう意味で口にしたの?
「まあ、次はちゃんと言えば? 好きなら好きって。どう転ぶかはわかんねーけど。少なくとも俺は、言ってよかったなと思うし」
……バカなことを想像した。
嬉しそうに笑う瀬戸山は、きっと江里乃としている交換日記を思い出したんだろう。
あのしわくちゃのラブレターから、ふたりはやりとりをし始めた——と、瀬戸山は思っている。
相手が私とも知らずに。
「……よかったね」
「ああ、まあな。お前もたまには素直になるといいと思うぞ。多分、悪くはならねえよ。ほら、お昼にデスメタルかかったし」
「ああ……あれね。家のCDひっくり返してまで探したんだから」
「やっぱりいいよなーデスメタル」
瀬戸山が好きなのは、江里乃。
嘘っぱちの江里乃との、交換日記で、瀬戸山はこんなに嬉しそうな顔をする。
「うまくいくと、いいね」
「……ああ」
「応援、してるよ」
——ウソだよ。
苦しい。苦しくて、胸が破裂しそう。
次は口に、なんて。そんなの、できるわけない。私が好きなのは、瀬戸山なんだから。