交換ウソ日記


もう、これ以上ウソにウソを重ねたくない。
昨日の夜、やっと決意をしてこの一言だけを小さな文字で書いた。

瀬戸山の靴箱にそっと、手紙を入れる。

……本当は交換日記に書こうと思ったけれど、どうしてもあれには書けなくて……ノートの切れ端を入れた。

手元に残った交換日記のあいだに、そっと挟んで、一緒に返す。
……こんな、ウソで出来ているような交換日記いらないかもしれない。
できれば、私が思い出にもらいたい。

でも、私が持っているべきものじゃない。

やめよう、もう。
そう決意して書いたのに、まだ手が震える。まだ、迷っている自分に、自分で嫌になる。

パタン、と勢い良く扉を閉めて目をぎゅうっと瞑る。

そう、これでいいんだ。
こうしなくちゃいけないんだ。

あんな一言の謝罪で、許されるなんて思っていない。
最後までずるいのは自分でわかっている。『ごめんなさい』とだけしか書かなかった。私の名前は入れなかった。

手紙の相手が誰だかバレていないのをいいことに、自分から告げることをしないなんて。


「最低……」


ふっと自嘲気味な笑みが溢れる。

それと同時にポケットのスマホが震えて、メールの受信を私に知らせてくれた。
差出人は瀬戸山。


『もう体調大丈夫か?』


昨日のウソを信じて、心配してくれている。

この関係を、どうしても、失いたくないんだ。
たとえ、友達のままだとしても。瀬戸山が江里乃のことが好きだとしても。
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