交換ウソ日記

「ホントはね……お昼の音楽、私の趣味なの」


ずっとウソついてたの。
今思えば隠すようなことでもなかった。笑って言えばよかったのかもしれない。

怖くて、曖昧に笑ってウソをついたから、何度も何度も同じウソをつき続けた。
自分でかってにウソをついたのに、その話題になるのが苦しいとさえ思っていた。

なんて、自分勝手だったんだろう。


「ロックも、デスメタルも、私が、好きだから流してたの……ごめ、ん」


なんてばかなことを。
そう思うと虚しくてまた涙が浮かぶ。

怖くてみんなの顔を見れず俯いていると、優子が「なんでそれ早く言わないのー!」と急に叫び声を上げた。


「え、え?」

「ちょっとバカにしちゃったじゃない! 希美が好きだってわかってたらあんなこと言わなかったのにー! あ、でも私のせいか。余計言い難くなったよね、ごめんー!」

「ぶは、あははははは!」


優子の突然の謝罪に、目をぱちくりさせていると江里乃が豪快に笑い始める。
え、なに。
どういうこと? どういうことなのこれ。


「私は気づいていたけどね。希美の趣味だろうなあって」

「え!? マジで!? なんなの私達が鈍感みたいじゃない!」

「そういうことだけど?」


呆然と立ち尽くす私を置いて、みんなが盛り上がる。
え? こんなので、いいの?


「楽になった?」


クスっと江里乃が私を見て笑う。

ああ、本当だね。
今までなにに怯えていたんだろう。こんなにも、簡単なことだったんだ。
ううん、もしも、好きなことを知った上で否定されていたとしても……気にするようなことじゃないのかもしれない。


いくつかのウソが、すっとなくなって急に体が軽くなった。

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