交換ウソ日記


「あーもう……!」


あんなに考えたのに、まだもっといい返事があったんじゃないかと思ってしまう。
今ならまだやめることもできる。まだ誰も学校には来てないだろうし。


頭を抱えて暫く考えてから「もういい!」と声を出して諦めた。

これ以上悩んでも結果は一緒に違いない!


床からすくりと立ち上がって自分の席にどかっと腰を下ろす。
昨晩ずっと手紙と向き合っていた上に、早起きまでして寝不足だし、みんなが来るまでちょっと休もう。


机の上に頭を乗せて、目を瞑る。
まだ胸がどきどきとうるさい。


……あの返事を見た瀬戸山は、どんな反応を示すだろう。
がっかりするかな、それとも、嬉しいとか思ったりするのかな。


そしてまた……返事を書いたりして。


くすっと笑みが浮かんだ。


まるで、私が瀬戸山にラブレターを出したみたいだ。“ありがとう”って書いただけの紙を渡しただけなのに。

しかも瀬戸山のことを好きなわけでもないのに、なんでこんなにたくさん悩んで、瀬戸山のことばっかり考えて、緊張してしまうんだろう。


告白じゃないけど、自分の気持ちを、自分の言葉で、相手に伝えたからだ。

こんなこと、初めてだから。


瀬戸山も、こんな感じだったのかな。

あんまり関わりたくない人には違いないのだけれど、瀬戸山が落ち込んでいるって知ってからほんの少し、ほんの少しだけど、親近感がわいた。


心拍が落ち着いてくると、ああ、渡しちゃったんだな、と改めて思って、大仕事を終えたような達成感に満たされた。

同時に、すうっと意識が遠のいていく感覚が私を襲う。


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