ボレロ - 第三楽章 -
数日後、私をさらに追い込む事態が起こった。
追い込まれたのは私だけではない。
その中心に立たされたのは知弘さんだった。
「静夏と子どものことが、兄たちに知られてしまった」
「えっ、叔母さま方にもわかってしまったの? どうして!」
「わからない。兄さんから、すぐにでも会って話を聞きたいと家に呼ばれたよ。
明日は姉たちも集まるそうだ」
「どうするつもり? いま話すのは時期が悪すぎるわ。
叔母さまがたは、近衛グループの吸収合併をまだ疑っていわ。知弘さんも加担した
と思われるかもしれないのよ」
「とにかく話すしかないだろう。いずれ話をしなければならないんだ、隠しだてし
ないほうがいい。
それにしても、このタイミングで情報が漏れたとは、まいったな」
「静夏ちゃんにはお話になったの?」
「今夜の話し合いのあと、彼女に電話をするつもりだ。
それより珠貴、君と宗一郎君の立場がいっそう悪くなってくるな……」
「そのようね……神様が私たちに、別れなさいとでも言っているようだわ」
「そんなことを言うものじゃない!」
どこまで状況が悪くなるのだろう。
見えない何かに追い詰められていくことにも疲れた。
知弘さんの叱る声も、今の私には響いてはこなかった。